Documentary film
絶滅危惧種でありながら⼈間社会で酷使されてきたアジアゾウ。その声なきものたちを守り、「いのちのつながり」を語り継ぐ保護活動家と若い弟⼦の苦闘の物語
タイで25年間ゾウと自然を守ってきたレックは、大学を中退し一家が所有する55頭のゾウの世話をしなければならない青年ニューと出会う。彼を見習いとして受け入れたレックは、次の世代に生きとし生けるものの尊さを伝えたいと願いながら、ゾウに虐待のない生活を与えるためにニューをサポートする。
象は5 0 0 年以上前からタイ社会を舞台裏で⽀えてきた。かつては戦闘や移動の⼿段、富の象徴とみなされ、1 9 世紀以降は材⽊運搬で酷使された。1 9 8 9 年の森林伐採の禁⽌後、象は観光産業に投じられ客を背中に乗せ、曲芸も演じさせられる。2 0 0 2 年、象観光の舞台裏にある虐待的調教を告発したのが、本作の主⼈公レック・チャイラートだ。その告発が契機となってタイの観光は国際的な批判を浴び、レックは⼀時期、国内の観光業界から敵視される。しかし近年、動物保護、⾃然保護、持続可能な観光への意識が⾼まる中、レックが実践し続けている「象にやさしいエコツーリズム」がタイでも主流となってきた。
少数⺠族カム族出⾝のレックはタイ北部の⼭深い村で育ち、
40年に渡って写真、映像、インタビュー、書くことを生業にしてきたものとして、コロナ禍で自分たちに、今できることは何かを考えていた時に再会したのがレック・チャイラート氏だった。移動は制限され、観光業は壊滅的だった。飢えた象たちやマフート(象を世話する人)を救うためにレック・チャイラート氏は奔走していた。見えてきたのは象の苦境だけではない。森林伐採、環境破壊。象と人との共存のあり方。全ては繋がっていた。象と人の物語を紡ぎながら次世代に何を残していけるのかを考えたいと思った。
2005年に奥野安彦がタイ・チェンマイに設立した映像制作会社。日本やタイの放送局、多国籍企業、NGO、日本の自治体など、さまざまなコンテンツを制作している。2021年5月にスタートした「Unspoken Souls」は、同社にとって初の長期ドキュメンタリープロジェクトとなる
タイの近代以前の歴史を振り返ってみると、ゾウとタイ人の関係は数百年以上にも遡る。移動手段、肉体労働、戦争の手段として、またヒンドゥー教や仏教の儀式においても重要な意味を持つ象は、タイの文化において常に重要な動物であった。
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